電気じかけの予言者たち―TMネットワーク・ストーリー1983

『電気じかけの予言者たち―TMネットワーク・ストーリー1983』は、TMN終了の際に出版された木根尚登の著書。

TMネットワークデビュー前後のエピソードをまとめた内容で、当時のレコーディングの様子や木根、小室、宇都宮の会話のやり取りに至るまで、詳細な様子が描かれている。

驚くべきは木根の記憶力だ。
私なんて10年前に組んだバンドでの会話やライブの詳細な内容なんて、ほぼ覚えていない。

恐らくは記憶の断片と当時の何らかの記録を元に、小説風に再構成したのだと思う。

だからと言って大部分が作り話なのかと言うと
そうでもなく、TMネットワークデビュー前後の貴重な記録として読める。

プロデューサー小坂洋二とのユニット名を決める際のやり取りや、
小室みつ子を交えたレコーディング風景、
大江千里との出会い、コンピュータが上手く同期しなかったエピソードなど、ファンなら誰でも知りたい興味深い話がかなり詳細に綴られているあたり、木根のサービス精神が感じられる。

『音楽業界をアッと言わせてやるんだ』
と、ポリシックスと生ギターだけでデモテープ作りに意気込む若き日の小室の姿は、
おこがましいが、無鉄砲で根拠の無い自信に満ち溢れ、バンドに明け暮れていた若かりし頃の自分の日々と重なった。

バンドをやっている人間、バンド少年だった人間なら共感出来るであろう、ワクワクハラハラ感を楽しめる事も出来る一冊だ。